自家栽培

にがりの技術を上げるという一点の動機により、珍しい大豆の品種を自家栽培するようになりました。

私は厳密な意味では農業者ではなくあくまで豆腐職人ですので、豆腐製造に寄与できれば良いという思いのもとに農業をやっていることと、簡単なものは避けるという考えもあり、難しいほうが面白い、そして失敗しても良い、と思っています。

ここで言う難しさとは、除草剤や殺虫剤や化学肥料も使わないということです。基本的に大豆畑には肥料を入れないというのが原則でして、動物性堆肥も一切使いません。使うのは、豆がら、落ち葉、おからです。冬の時期には小麦をまいて二毛作にしているので大豆の連作を可能にしています。一方、完全に大豆だけで毎年単作をしていくと何が起こるか、ということも調べています。連作障害が当然起こるのですが、そのときの土中の栄養バランスや微生物のバランス等を調べたいと思っています。

大豆の収量は、年間30~50種類の大豆を作っていますが、それぞれの大豆によってまちまちです。例えばサトウイラズという品種は、私のやり方だと一反に100~150kgくらいしか穫れません。そのかわりサトウイラズは豆の大きさにムラがなく、選別後のロスがほとんどありません。

今まで蒔いた大豆の種類は、2017年の時点で、国から買ったもの、自分で集めたもの、全国からもらったもの、物々交換したもの、変異のもの、全てを含めて230種類前後あります。ただ、20粒まいて収穫がゼロになる可能性がある大豆もあるくらいなので、実際に豆腐にまで仕上げられた大豆の種類は230種類よりもはるかに少ないです。大豆のどれもこれも可愛く愛おしいもので、出来が悪かったものは悪かったもので記憶に強く残っていますし無駄なことはなかったと思っています。

畑の面積は全部でおよそ二町歩(約2ha)、大豆全体の収量は2~3tくらいです。それがどのくらいの量かといいますと、例えば、365日毎日豆腐を作っていますので、3tを365日で割ると1日で豆腐にできる大豆の量はおよそ8kgの計算になります。8kgといえば当店で大豆を煮る窯の一窯分(豆腐約60~80丁分)になります。