豆乳を固めて個体にするものを凝固剤といいます。

大きく分けてにがり、硫酸カルシウム、グルコノデルタラクトンの3種類になります。

寄せるという言葉は豆腐だけでなくてほかの食品製造行程でも使われているようです。

字のごとく「よせあつめる」つまり散らばっていたものを集める、かためるということでしょうか。

 

豆腐は中国で発明されたということになっています。

いきなり豆を煮て、投入をしぼり、それに何かを混ぜたら固まってしまったのでしょう。

そう、豆腐の前に豆乳が食品・飲料として存在していたものと推定されます。

しかもそれは飲み物としてばかりでなく料理にも多様に使われたものと推論したくなりますね。

 

さて豆腐の凝固剤として歴史的に長く使われてきたのは硫酸カルシウムとにがりです。

硫酸カルシウム・にがり共に自然界に存在する天然物です。

硫酸カルシウムは山から、にがりは海から。

 

豆腐が日本へ伝わる過程に海があり島があるということで日本が簡単に豆腐を作るとしたら自然と海に関係のあるにがりを利用するようになったのは自然のことかもしれません。

現に沖縄には島豆腐といって豆乳に海水そのものをまぜて造る豆腐もあるので、豆腐製造における"海、海水"の意味はとてもおおきなものであったと考えられます。(2015.03.02)

 

1.硫酸カルシウム

 豆乳との化学反応はゆるやかで、攪拌するときの繊細さはにがりと比べるとかなり不要ではありますが「どこで攪拌を止めるか」の見極めにはやはり熟練を要します。

 攪拌しすぎることは「完璧に化学結合したもの」を壊すことになり、結果できあがった豆腐は絹ならもろもろ、もめんならかちかちでざらざらのの堅い豆腐になります。同じ"堅い"でもつるつるの堅いのとはわけが違います。

 この凝固剤はにがりと比べると豆乳の甘み・風味を生かすちからはやや劣りますが、きちんと化学結合しているときの凝固状態はきわめて良好でにがりと比べるとしっかりとした堅さの豆腐になってくれます。

 

 

2.にがり

 海水を煮詰めて塩を製造したときの残りの液体がにがりです。

 豆乳との結合に関わるほとんどの部分は塩化マグネシウムという成分です。

 にがりは古来"苦汁"と当て字されてきました、事実苦い液体です。

 豆乳との化学反応の速度はとても速くて、豆乳に降り注いで交わった部分から即座に反応しはじめるわけですが、これをいかにすばやくおけ全体の豆乳ににがりを行き届かせ均質に化学反応を起こさせるかということが我が国古来からの伝統技術でありました。これは裏を返すと、いかに反応を遅らせてやるか、という知恵にもつながるわけで戦後のにがり技術の発展はこの「反応遅延化」工夫に明け暮れしてきたように思われます。

 まちの小さな豆腐屋では、攪拌の工夫・豆乳濃度・豆乳温度、ライン生産ではこれに加え逆転の発想による充填法や固形にがりの周りに油脂を貼り付けるなどの工夫をしてきて大量生産でもにがり100パーセント凝固が可能になりました。

 さてそれでは"手作り"は無意味になったかというとそうではなく、今の製造プラント技術ではおいつけない結合の微妙な意図的なずれや品種の違いおよび同じ品種でも性質のずれに即時対応できる技術という点で手作りに(ただし熟練の)軍配があがります。ライン生産のセンサーそのものが単純すぎる、ということがその原因ですが(ずらしまで含めた)完璧な技術をもった職人のプログラミングに基づくセンサーができれば、いずれはライン生産でもうまくいくのかなという感じはします。

 

ライン生産、手作りのどちらを選ぶにしても一番大切なことは「風味ゆたかなおいしい豆腐」に仕上げるということです。

材料の善し悪しだけをうたっている豆腐にたいしたものがないのは、ものつくりとしての規範の設定に誤りがあるからです。(2016.04.04)