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豆腐屋の研究室


超薄い豆乳をにがりで寄せる


 薄い豆乳というと一般の方からはなんだかもうけすぎの世界のように思われていてイメージがよくありません。しかしにがりで寄せる場合は「薄い」ということの特性が豆乳の凝固物の表情にすぐ表れるのでごまかしの利く世界ではありません。

 まず当然のことながらにがり100では柔らかすぎてきぬは無理です。そこでこれはもめんだけに使える手法です。もめんならば元の豆乳がうすくて一次凝固物がやわらかくもろくても箱盛り成形の段階で圧縮するのでたんぱく質の密度は薄いわけではありません。

 伝統的には戦前まではこの薄い豆乳でやるのがほとんどでした・・・絞り機の問題からそうせざるをえなかった。

 自分が豆腐を習い始めたのは13、4度からでそれ以下というのは未知の世界です。

 大豆の持つエキスは薄い方が友好的に外に出てくる・・・つぶした大豆のまわりの水が多いほどエキスが溶け出していきやすい・・・ということは簡単に理解できるでしょう。ただ加水が多いため「薄く感じる」というだけのことです、密度が薄い。

 豆乳は濃ければ濃いほどにがりとの反応がのろくなり作業しやすくなります、言いかえると濃いほど簡単になるということです。寄せ技術が稚拙でも豆乳の力が強いので「まあなんとか」なってしまうのです。

 逆に薄いと、反応速度が速くなりていねいに寄せなければなりません。「ていねい」ということはもちろん濃いときでも同じことなのですが、ていねいでなくても「破綻をきたす」ことはまず無いということです。薄い場合の「いいかげん」は破綻をきたします。

実験記

2002


7.19
 未知の領域なのでわくわくする。通常の3倍ほどの水を挽いた呉に加水し、故障のなおった糖度計で゜はかる。10度のところで水平線がひかれている。なんだ意外と濃いな・・・。
 これくらいだと一発寄せも可だろう。
 一回目いつもの7がけぐらいのにがり量。・・・まったくだめ、液体。おかしいなあ、温度がひくすぎかな。
 二回目いつもと同じ量のにがり、荒れそう・・・、なんとちゃんと寄っている。染み出るおつゆもまっ黄色ではない、もちろん白濁でもない。やや白味がかった透明。
 食べてみると甘い、うまいではないかい。ただし濃厚さは欠如している。温度・にがり量のバランスでやわらかいとは言えきぬもできるのではないかと思う。

7.31 通常の4倍程度の加水をして煮る。8度のところで水平線が引かれている。できた豆乳はさらさらもいいとこで水みたいである。ただ、超濃いのと違って水分が多いと熱のまわりが呉全体に行き届きやすくよく煮える。しかも絞ったときエキスの抽出率もきわめて高い。ただ水分が多いので「うすく感じて」はしまうのだが。

 というわけで薄いながらもあまーい豆乳を寄せる。超ハイスピード反応となることが予想される。やっこくなるとわかりながら温度低め。
 にがりは7がけの量・・・やはり少なすぎでほとんど寄っていない。
 いつもと同じ量のにがり・・・あれてるかなーといった対流となる。しかしきれいに寄った。すくってみると「甘い、がやや水っぽい」といったところ。すくったあとは黄色いおつゆが出ているので状態としては「過」の状態すなわち白濁や透明ではなく黄色とあいなるのである。
 もめんや寄せ豆腐としては商品となる。これで十分。むかしはだいたいこんな薄さ・・・もっと濃いのも簡単にできたと思う・・・ではなかったのではなかろうか。
 ただし根本的に違うのは「一発寄せ」ではないということである。
 かいでおぼろ状のふわふわ固形分を作り、それを型箱につめてもめんにしたのである。

 一発寄せでこの8度という濃度ではきぬは無理というかクレーム続発かな、というより水槽にあけてちょっといじっただけでこわれそう。

 この章の目標は「かいでおぼろ状」ふわふわが目的なのだがその下準備で一発寄せで研究しています。