櫂(かい)で寄せる
わが国の戦前までの豆腐を寄せる・・・豆乳を攪拌する道具は(大小、形状の微妙な差こそあれ) " かい " でした。舟を漕ぐときのあのかいです。
戦後は簡単に規則的対流がおこせるということから、お風呂を攪拌するときのあのかきまぜ器に似た(というより、まねたんだと思いますが)ワンツー寄せ器というのが主流になりました。あまりいい名前ではなく無粋ですらありますが、「いーち、にー」という具合に上下するのでそう名づけたんでしょうか。
この道具プラスフレーク状固形にがりの登場によってにがり豆腐が一機に簡単になったということではその功績は大なるものがあります。
豆乳のゲル化・対流の変化を読み取れるようになれば、液体をかき混ぜることのできるものならなんでもOKということが予想されます。包丁、坊主(豆腐屋の使うしゃくのことです)、おたま・・・泡たて器はダメだな・・・等々いろんなものが考えられます。
自分も習いたてではかいで始めましたがむつかしくて途中でやめました。
超薄い豆乳での寄せ等伝統的な作業を再現したくかいでの攪拌も習得できねばということで実験をしていきます。
ただし伝統的なやり方は一発寄せではなくふわふわおぼろ法です、そして今風のはワンツー的寄せは一発寄せです。したがってまずはかいを使って一発寄せから入門しましょう。おぼろが最終目標。
親からは豆腐道の基本的な原理しか教えてもらいませんでしたが、結果としてそれにより無数の失敗を生みなおかつ無数のデータを頭の中にたたき込め不規則即時対応ができることになったと考えると、教育とは「ひとつの究極、正解」を教えることではないなとつくづく思う。
2002
8.05 手始めに坊主でよせる。しゃくのことです。
よく煮えたギンレイ、14度くらいだろう。
初めててなのでにがりの量はきちんと計量してやる。
無我夢中のようでいてちゃんとゲル化を追跡。
なかなか寄っていかないが自然といつもと同じ表情になる。
ワンツーだと3-5秒程度の作業になるが、今日は10数秒かかっている。こういうのって結構不安になるものだ、すなわち「寄らない」のではないかあるいは「ざらざら・ぼろぼろに荒れて」しまうのではないかと。
でもいつものようにゲル化を見極め攪拌ストップ。放置。
きれいに寄った。クリーミーである。
坊主だと攪拌がやや弱いのだろう。それだけすみずみまでにがりが行き渡るようにていねいに攪拌しなければならない。半球体なので垂直水平どの方向にも自由に動かせるのがいい。しかしむちゅくちゃはだめだと思う。自分なりの対流を起こしてやらないといけない。
また寄せ箱の開口面積に比して半球体の直径が小さいので対流に乗るというよりも製作者のコントロール感・力がものをいう。
寄せ箱目一杯に豆乳を入れてあるので1.5割程度豆乳がこぼれる、これは避けられないので最初からそれを見越して豆乳を入れるべきだ。
この方法をやっていたのが東京板橋のXさん・・・名前を忘れてしまいました・・・です、考えてみるとすごい人だったということがわかる。この人はワンツーは使っていませんでした。かいと坊主や包丁です。
8.06 2回目ということでやや安心。
何回振るかなどということの全く利かない世界で、観察力だけがたよりになる。
それだけに人に見られてもまずまねはされない領域でおもしろいこということなし。第一かっこいい。
単純なものこそ奥深いものであるが、究極は一枚の板すなわち包丁かかいだろう。
下から上への対流を作るためには先端がカーブないしえぐれていたほうが機能は上だ。
8.07 今日もぼうず。
最初っから失敗もなくすんなりとできてしまったのでつまんないといえばつまんないのだが、攪拌力の弱さということを考えると繊細この上ないやり方で奥は深い。最初からこれは無理であろう。 見せ物としてもおもしろい。
すべて14度でやったが15度ではちょいとむつかしいと思う、課題としてとって置く。
今日はギンレイでやったがそもそもが良く煮えていたのでラクチンであった。ラクチンはつまらないのではあるが、旨いのはラクチンな時である。妙にマニアックになってしまっている自分をいましめる。
あしたは15度挑戦はやめて、包丁でやってみよう。これは長いこと遊び・楽しみでやってきた方法なのであるが15度をちょくちょくやるようになってからはごぶさたである・・・ここ3、4ヶ月かな。
8.08 包丁で寄せる。薄めにとる、13度くらいか。
寄せる前、水でイメージトレーニングをする。
下から上へ引き上げることも可能なのでかならずしも先が曲がっていたりする必要はないのかとも思うがあまりにも単純な形状である・・・ただの平たい板。
よーく観察しながら攪拌。単純な水平動はやらない。ななめに上下対流が起こせる。
攪拌力が弱いためにがりの計量はちゃんとしておく・・・時間が長いので不安になりつい追加したくなるので・・・すみずみまで散ってくれたと勝手にイメージしなおかつゲル化の適度を確認して攪拌停止。
放置。
つるつるに寄っている。この方法は今までもやってきているので確実にできた。
欠点は大きめの重い包丁を使うので手からぽとりと落ちて豆乳中に水没ならぬ乳没する不注意をよくやることだ。
8.09 きょうも包丁。14度。OK。
なんにも破綻がないのでつまんないが15度になったら・・・・? という疑念は残る。
あのどろどろの豆乳を強制的に攪拌しようと思ったらワンツーしかないのかな。
ただし温度が高いところにあればまださらさらしているのでフレークにがりを使えばなんとかなると思う。
だが自分は液体にがりしか使わない。
8.12 大きいほうの新ぴかの型箱でかいを使って寄せる。14度。
計量きちんとやる。温度計は使わない。
攪拌力が弱いのでどうしても「やりすぎ」になりやすい。きょうのはやや攪拌しすぎ・・・しみだすおつゆがやや黄色い。
回数を重ねればこのへんはどうにでもなるだろう。
おじさんの遺作の型箱でたしか高級まな板をつくったのと同じ板とかで作ったもので、ひのきでないことはたしかでイチョウだったかしら・・・記憶があいまい。木の香りがけっこうついてしまう。たる酒ならそれでいいのだが・・。
目で見た限りはまったく問題ないのだが食べた感じはいまいちかな。ねっとり感は欠如。香りと甘味はOK・・・でも味抜けははやいかな。
| 初稿 | |
| 2002/8.04 |