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高温で寄せる

2004.1.28初稿

にがりは一般にそれ以外の凝固剤に慣れたものからすると低めの温度で寄せるのが常識である。ある業界紙に大島の海水にがりで82度にて、しかも大きなワンツーでおもいっきり力強く攪拌しているところを画像でみたことがあるのだが、このメーカーの記事が明らかにうそであることはだれの目にも明らかである。80℃でもにがり凝固は可能である。しかし攪拌技術はあんな安易なものではない。


さてにがりは低温での作業ということから日持ちの見地からすると好ましい凝固剤とは考えにくい。
もっとも近所の町店から買うという週間が一般化すればこんなことは心配する必要がないのだが。
買ったその日か次の日に食べてしまえば済むことである。
どんなに大豆を洗っても、絞り機や道具を熱湯消毒しても、製造後ホットパックしても冬場で一週間程度が限度であろうと思う。


さて「高温で寄せる」というテーマであるが、何もこれは日持ち云々のために実験をしようというわけではない。
単なる好奇心である。
それともうひとつプラスα、つまりユキホマレに代表される「急速なじみもろもろ凝固」に対する訓練ともなるということである。
また知識の拡大というものはかならずといっていいほど知的・技術的な副産物をもたらしてくれるものである。
まあにがりの高温凝固といえば「荒れ」といふことがすぐ頭にうかぶのだが・・・。しなりもないし、ねっとり喪失・・・と欠点ばかりがうかんでくるのだが。

技術の限界を探ってみよう。


実はきょう2004.1.28、時間がないというのでおそらく75-80度で寄せてしまったら、対流の具合や「ぼこっ」の具合からどうみても失敗と思われて即廃棄とおもいつつも表面が強寄りのときとは違う普通のきれいな寄りと同じ表情をしていたので、水槽にあけてやるとなんときれいに寄っていたのである。しかもこれに使った豆乳は薄い豆乳である、13度前後であると思う。
チベットのにがり以上のハイスピード・リアクションの極致といえるがなんということだ。
ということで一般には非常識領域と言われる75度以上を探ってみたい。


2004.9.11 ギンレイの14度を3種類で寄せる。
 うちの絞り機ではやや濃いのでちんたら絞りまではいかないがかなり遅い。
 出てくるときはでも82度ぐらいはあると思う。
 準備をしたりしていたため、78度ぐらいになっている。
 3種類で寄せる。
 チベットのにがりフレーク。いつもの量。
 意外とゆっくりとできる・・・という拡販4往復。きれいによっている。周辺がかすかにどろりかな。低部も苦くはない。
 フレークはかなりやりやすい。80℃以上でも大丈夫だと思う。
 くねりもある。

 ミクロネオエキス。こちとらはチベットのと成分的にはほとんど同じだが顆粒状のさらさら微粒子となっている。上より反応は速いがちいさいとはいえ固形であるためそんなにびっくりするほどのこともない。均質なつぶなので非常に安定した寄せができる。底のにがみはまったくない。やや寄せが強すぎたせいかくねりはチベットのより劣る。味もチベットのほうがいいが、これは技術的な問題なので「手で調整」すれば直せる事柄。

 藻塩にがり。要するに海水にがりであるが海藻が入っている分反応は遅いはずなのだが80度近くともなるとそうはいかない。ハイスピード。このレベルになるとワンツーもかっちりと規則的に対流を起こしているやうな寄せ方ではどうにもならない。二枚羽、変則二枚羽などはなんのやくにもたたない。要するに道具にしたがっているだけではどうにもならない。自分の手がコントロールというか不規則対流に手をまかせつつじつはこちらのコントロールに対流・ゲル化をのせなければならない。
 まったくあれずにきれいにできる。周辺ドロもかすかにあるのでいい感じである。事実食べてみても「あまりにもピーン」とした感じはない。上のミクロネオエキスよりもうまい。
 いずれにしても液体は反応がはやい。
 チベットやミクロの液体はもっともむつかしい寄せとなる、きょうはやらなかったですが。


2004.9.13 キタムスメ13度ぐらい。二種の「ほとんど塩マグ」で寄せる。きょうは正確に80℃


チベットのにがり液体。豆乳に注いだと思ったら即反応、乱れにみだれの攪拌。ムダな抵抗でした。
 ここまでハイスピードとなるとコントロールが利かない。確かにいちおうは寄っている。いわゆるもろもろ荒れは無いが、低温でのムラ寄りとは一味ちがったムラ寄りとなる。ピーンと張っている、うまくはない、しかしにがり味はにがり味である。消泡剤でもたっぷり使って乳化が良ければ可能かもしれない。
 いやはやこんなにむつかしいとは・・・。

ミクロネオエキス液体。こちらも同じである。チベットのでこころの準備ができていたとは言え、やはり追いつけない。なんとも難問である。

この高温寄せは別にアクロバット技術を身につけようとしているわけではなく実は、ユキホマレの寄せ時に遭遇する「急速なじみもろもろ系」に対処するための訓練と考える。
 ただし高温寄せそのものの本質は「急速なじみもろもろ系」ではなく「急速乱れなじみ分裂寄せ系」といえる。しかし手の動きと「読み」の訓練にはなる。
 わずか1.5秒から2秒の勝負である。
 

2004.9.14 タマホマレもめん用13.5度。消泡剤普通程度使用。
 薄い豆乳なので絞り機での温度低下はあまりない、出たては85度。いくらなんでも85℃は・・・ということで80度まで下げる。消泡剤が入っていることとタマホマレであるということから豆乳の力の強さが期待できる。
 チベットのにがり液体。うわー、やっぱりはやい ! 1秒の勝負かな。
 荒れはほとんどない。ただしゲル化に追いつけない分、むらに寄っている。かなり剛構造と思われる。
 豆腐の表面の区画整理肌現象からきぬ豆腐としては売れない。
 しかしもめんにしてしまうとそれなりに必要条件は満たしているので商品としてはOKといえる。
 ぴーんと張りすぎているので好みではないのだが味はいい。
 箱盛りするときも黄色い水は出ない。白濁まではいかないが透明っぽい白い水となる。

 このようにさすがタマホマレと思った。
 タマホマレは「味を出す」ことにおいては工業的には極めて劣った(だれにでも簡単にできる、という意味での工業的見地から言っての話)大豆といえるが、しかし寄せという観点からすると工業的にはフクユタカをはるかに越える完成度を持った強固な大豆である。

 きょうはこれだけ。


2004.2.15タマホマレ14.5度。うちの絞り機ではかなりきつい濃さである。出た豆乳は80-82℃である。タマホマレの力の強さをたのみに、思いきってチベットのにがり液体を使う。
 攪拌してもなんと海水にがりを使った時やふだんの70℃-75℃程度の時とかなり同様の対流となる。まったく混乱はない、なんだコレ。2-2.5秒の作業。
 できは極めて良い。くねくね、粘性も十分である、ぴーんとしたはり過ぎもないし区画整理肌でもない。・・・うまい。
 
 タマチャンはきのうも言ったように寄せ特性は大豆品種中最高位にある大豆なのだと思う。すばらしい安定性である。これならば普通の海水にがりであるならば、絞り機から出てきたのをすぐ寄せてもいい。おけの径に対して8割程度もある大きいワンツーや二枚羽、変則二枚羽は不適切である。径の比率のちいさいものあるいは思いきって1枚の板すなわち"かい"や豆乳量が少ないならば"包丁"が最も適している。

 豆乳コントロールを楽しむにはとても良い教材と言える。