大豆がひねるといふこと
2004.1.16
収穫してから時間がたっていくことを「ひねていく」といいますが、一般的なイメージとしてはお米の例から類推して「まずくなっていく」と考えるのが素直な考え方と言えるでしょう。
時間がたっていく・・・乾いていく、酸化していく、・・・・いろいろな変化が豆の内でも表面でも起こっていると考えられます。
収穫したてよりも少しは時間がたったもののほうが・・・というのはそばでも米でも小麦粉でも、はてはくだものの一部などでも・・・おいしいのではないかと思うのですが大豆ははたしていかがなものでしょうか。
豆腐の旬はいつかという質問に対して「大豆の収穫から時間のあまりたっていないころ」とか「9月を過ぎてひねてから」などという対極的な意見がよく出ますが真実は・・・。
ひね方には2種類考えられます。すなわち、
1.常温というか温度をさほど気にせず少しすずしいところにすっぽっておくこと。
2.温度に十分気を使って、すなわち低温でということ、変化の無い一定のところにしまっておくこと。
の2つが考えられます。
私が豆腐を習いたてのころは1.であったと思います。
当時はいいかげんなもんで、もちろん大豆の入っている30キロの袋には品種名は書いてあったのですが、問屋さんとの取引はただ長野県の、佐賀県のなどというだけでした。
ほとんど輸入大豆が世の主流だったころですから仕方ないといえば仕方ないのですが。
さて保存方法もいい加減だったと思います。9月になるとてきめんに「ちからが落ちて」しまうのです。香りは富んでしまいます、まずい。寄せも反応がはやくて難しくなりました・・・・・。
現在は低温保存と言ってかなりすずしいところにおいてあるそうです。といっても冷蔵庫の中ではないそうですが。いずれにしても春から秋のあいだはだいぶ気を使われているようです。北へ行くほど自然環境のせいで保存は昔からよかったと推察できます。
9月を過ぎると甘味系の大豆に特に顕著なのですが、甘味が強くなるように感じられます。また色の問題ですが酸化が進行した分色が「くろっぽく」なってきます・・・これをいやがる消費者・料理人がいるようです。
甘味が強く感じられるということの意味ですが、自分としては「甘味が強くなる」のではなく他のうまみやえぐみの経時変化による変質から相対的に甘味が強調されるのではないかと考えています。
要するに「単なる劣化」だと思います。
ただ食べるひとにとって「うまい」と感じられるのであればもちろんそれは「劣った」ことではなく尊重されるべき「劣化」だと思います。
きょうはたまたま伊豆下田から贈られたとんでもない「うまい干物」を食べたのでこの項を書いているのですが、中華素材の多くやきょうのやうな干物の場合は天日で干していくうちに新しい成分が生成してくるということはみなさん知っていることと思われます。
大豆は天日にさらして保存しているわけではなくむしろ涼しい日のたあたらないところに保存しているわけで、ゆっくりとした乾燥化・酸化が進行しているのだと思います。
いつが一番うまいかということになると大豆の品種の差や食べるひとの個人差があるのでなんとも言えません。
収穫したてはとにかくあふれんばかりの自然のいぶきを感じられますが何か味に焦点がない。
ひねると味に焦点が定まってくるのではあるか゛何か自然の息吹が貧弱になってくる。
食べるひとの好みの問題といふか「味覚の哲学」の問題であると思ひます。