TOPのINDEXへ


ぶれながら伝達されるいのち

2006.5.02 


 各所で述べているようにタネの質の変化というものは多くの改良品種にとっては不可避の問題であるようだ。次の世代へのいのちの伝達はまったく同じコピーを作り続けていけるというわけではない。
 動物等と違って自家受粉の作物たちですら"伝達"にはブレが生じる。仮にオリジナルがαとして遺伝に伴う変容域が±5あったとする。2代目にα+5が生じ、3代目がさらに+5だったとすると(α+5)+5となりもとの状態からはだいぶはなれてしまう。ただしぶれ方には目に見えぬ力が働いているのか元になるαからどんどんはなれるいっぽうでもないようだ。
 いずれにしてもタネは直線的にオリジナルの"(改良品種の)合成形質"を受け継いでいくわけではない。
 だんだんオリジナルからずれていく、ただしある種の"抑え"をうけながら。
 ナカセンナリは古い品種で、自分がにがりを習ったのはこの品種で25-30年近く前である。
 やっこくて閉口したものだ、今のように知見も何もなく薄い豆乳でやっていたのでなんとも暗中模索の感があった。でもひじょーに甘かった。これがエンレイやフクユタカ(その当時存在したかどうかはわからない)等だったらそれ以後のにがりのがんばりはなかったと思う。また商売もなんの魅力も見失っていたと思う。
 今ナカセンナリは高たんぱくでへたをするとタチナガハ以下の糖質の陳腐な大豆である。
 25-30年たってまったく別物の大豆に変容したといっていい。
 
 ゆきほまれ。村中さんのばかりでなく他の産地のもやはり同じように高タンパク化しているので初期のように作り手を選ぶ大豆ではなくだれでも気軽に使える大豆となった。糖質は同じレベルと思えるが甘さの質は違うようで、初期の超甘のなかになよなよとした薄幸の小柄美女の色気があったものが今のは気丈ながっちり色白美人になってしまっている。
 売れるということでは今のが正解といえる。ちいさな品種改良が行われたものと大桃さんともども考えていたのだが別段そうでもなさそうだ。自然と変質してきたものと思われる。タネ屋さんはただ見かけでタネを選んでいるだけだと思う・・・だいいち"どんな味がするか"なんてわかるわけがない。
 開発されてからまだ数年の豆だ。

 リュウホウ。秋田農試の名品だが最近2通りの味、凝固特性の同名品種があることがわかる。肥料・土壌かもしれない。気候は秋田県内なので関係ないと思われる。
 それともそもそもタネが間違っていたとも考えられる・・・間違いの喜劇。

ほかの品種でも同じようなことが起こっているに違いない。50年100年ぐらいしたら新世代在来とでも呼ばれるようになり形質も固定するかもしれない。その収束点が先祖がえりなのかあらたの一点なのかはわからないが。

こういった微妙(あるいはワイルド)なぶれの究極点に行き着いたのが在来種である。もちろんまったく変異がないわけではなく、かすかに起こる。気候や土壌の影響で遺伝子が変異することもありえよう。
しかしとれるタネはきわめて均質で安定している。つぶのおおきさもほとんど同じで改良品種みたいに大中小ごってりとばらつきができるわけではない。
もちろん虫食いとか病気(これはほとんどないと思うが)は別の問題。

それでは在来と改良品種のどちらを選ぶか、ということになる。
自分としては「どっちも」である。
うまければいい。
ただそれだけ。
改良品種の変質はある意味で楽しみでもある。
ただし時々オリジナルの姿・形質を検証してみるのは試験場や大豆おたくの責務であると思う。
こういった意味でやはり「長生きしなければならない」、一年に一回しか実をつけてくれないんだもの。