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豆腐の基本凝固剤
豆乳と反応して凝固作用を起こす物質は大きく分けて3種類あります。
| T.にがり(塩基性凝固剤)・・・海水から塩を取った残りの液体で豆乳との攪拌作業は非常に困難です。 U.石膏・石灰系・・・硫酸カルシウムが代表で攪拌作業はかなりやさしいです。 V.グルコノデルタラクトン(酸性系凝固剤)・・・自然界に存在する物質で戦後大量生産のきぬ用に開発された凝固剤で攪拌作業は3つのうちで一番容易です。 |
大豆を食べ物として発見したのはいつか、いつから栽培を始めたのか、煮て食べるようになったのはいつか、そして豆乳を搾ることを思いついたのはいつからなのか知るよしもありませんが動物の乳からの連想で豆乳を作ってみようという発想がわいたのはごく自然のことのように感じられます。
そして豆乳を飲む習慣がある程度続いた中からそれを料理の中に入れたりすることを考え、偶然のきっかけから何かを間違って混ぜてしまったら「固まってしまった」というのがことの始まりかもしれません・・・・・。
偶然の混合としてまず考えられるのが「酸」ではないかと考えられます。昔から食卓の上にはくだものが出ていたと思います。グルコンという物質はもちろん発見されてはいませんでしたが、柑橘類の汁が混じってどろっとしたということは容易に想像されます。
次は塩、もちろん昔のことですからにがりのいっぱい入った自然塩、かな。海水から豆腐を作るページに自然塩から豆乳がゲル化すると書いてありますが、頭のいい古代人の推論により海水から塩を取った残りを加えてみるという方法にゆきついたものと思われます。
石膏・石灰系については何とも推論しがたいのですがこれらがものを固めたり漆喰のように接着剤的な性質を持っているということは案外古くから知られていたのではないかと思われます・・・?
豆腐の凝固剤としてはにがりと石膏・石灰系が紀元前から使われてきたわけですが詳しいことの起こりはわからないと思います・・・だから想像するのが楽しい!!!
各凝固剤の特性
T.にがり(塩基性凝固剤) さらににがりを詳しく分けると・・・説明のページ
海水から塩を取った残りの液体をにがりといいます。これはUやVとは違って複数の物質の混じった混合物です。この中で凝固反応を起こすのは塩化マグネシウムという物質です。したがってこれ以外のにがり中のほかの物質は凝固剤ではなく調味料として機能しています(もちろん凝固反応を示すものがかすかには入っていますが)。
豆乳との反応がきわめて速く豆乳に投入すると接した部分から即反応が始まるため全体を同時に均質に化学反応させるための極めて熟練した技術が必要。豆乳が濃ければ濃いほど攪拌は容易となっていくが逆にある限界点を越えるとどろっとしてくるため液体にがりだと豆乳全体への瞬時分散は困難となり凝固に「むら」が出やすくなり均質な寄せには高度な技術がいる。
完璧に「寄せ」れば3つの凝固剤の中ではいちばんきめ細かにつるつるに仕上げられます。よく「にがり豆腐は甘いけどざらざらでまずい」という記述に出くわしますがこれはとんでもない誤謬で技術の稚拙さを物語っているだけです。軟質系の大豆でも濃くとればそこそこ固くはなりますが基本的には「柔らかでしなりがいい」のがにがり豆腐です。豆乳が薄くても甘味・うまみ・香りが良く出せる凝固剤です。
わが国の豆腐のトラディッションはにがりとうふで戦前まではほぼにがりしか凝固剤は使っていませんでした。大陸からの知識により石灰・石膏系を使っていたものもかすかにはあったとは予測されますが。
大陸でももちろんにがりと石灰・石膏系の二つの流れがあったわけですがかきまぜ料理中心の大陸ではにがりをきわめるというレベルの豆腐作りはなされませんでした。
にがり豆腐は海洋国日本で洗練の極みに達した豆腐です。
ただし第二時大戦下の統制により(マグネシウム合金の生産と思われます)、細々とした連続性はあったことは確かなのですが、50年程度の大きな断絶があったことは確かです。
ここ20年の「にがりルネッサンス」によってやっと日の目を見ることができるようになったと言えます。
U.石膏・石灰系・・・硫酸カルシウムが代表
大陸ではこれが圧倒的に主流です。戦時中ににがりからマグネシウムがとれるということでにがりが統制になるとこちらを使わざるおえなくなってしまったわけですが、戦争が終わってもそのまま慣れてしまったものを使いつづけてきたわけです。その一因として簡単につるつるでなめらかな豆腐ができるということが原因と考えられます。
ただし逆誇大宣伝にあるようににがりだと豆腐の取れる量が極めて少なくて、こちらやグルコンだと比較にならないほど多いというのはまったくとはいいませんがかなり「あおった言い方」で事実を述べてはいません。技術がよければにがりでも歩留まりはいいし、硫酸カルシウムやグルコンでも豆乳を濃い目にとれば数は取れないわけでそれだけ濃密なおいしい豆腐とはなります、でもにがりを越えることはできませんが。
固さや、加熱に対する「耐ふにゃり化」にはすぐれた特性を示します。
構造的にしっかりとしたつくりの豆腐となります。
V.グルコノデルタラクトン(酸性系凝固剤)
初めの方でも述べましたように「酸」によって豆乳が凝固するということはにがりや石灰・石膏系よりも早く知られていたものと想像されますが、豆腐製造に使われるようになったのはこのグルコノデルタラクトンの発見・製造によってからだと思います。
攪拌技術が一番容易だということで機械生産にはぴったりで戦後の豆腐業界に与えた影響はとても大きなものがあります。
自然界にもともと存在するさわやかな味のする「酸」でハチミツ酸ともいいますが、1980年頃からのにがりの復興と「技術の稚拙さを棚におき材料ばかりを誇大宣伝する」自然派を売り物にする逆誇大宣伝によってこてんぱんにたたかれ続けてきた凝固剤です。
さすがに薄い豆乳では旨みはでませんがBrix糖度14、15度以上になると甘味・旨みが出てきておいしく食べられます。ただし充填豆腐法では無理で、手攪拌によらなければ旨みは出ません。
固さや、加熱に対する「耐ふにゃり化」にはこれもすぐれた特性を示します。
ぷりぷりとした触感でにがりの「ほろほろくずれ感」とは対極にあります。
もっとくわしくは
| 初稿2000.1 | 改訂2004.12.13 |